崖っぷち魔術師は嘘をつく~一夜の過ちを犯した相手には、好きな人がいました~
すぐさまレベッカが駆け寄るが、「ミランダはねぇ!」とヴィヴィアンが叫んだ。
「子どもがお腹にできたころ、別の男と会っていたのよ! ミランダは王国との戦争真っ最中に城を抜け出して、恋人のところに通っていたの! 城に保管している貴重な薬も、そいつのために使ったに決まっている! だから皇帝陛下の怒りを買って、アルベック城に左遷された――」
レベッカの放った空気砲が腹部に命中し、ヴィヴィアンは言葉の途中で吹っ飛んだ。すぐさま兵士たちが彼女を取り囲んで縛り上げるが――遅かった。
(ばれた……)
ざっと、全身から血の気が引いた。
なぜ、薬をくすねたことまでヴィヴィアンが知っているのかまではわからないが、彼女はミランダの左遷理由を知っている。
彼女には、ミランダが城を空けていた時期とセドリックがお腹にできた時期が一致することも、予想できた。そして……その相手がシリルなはずがない、ということも。
皆が周りで、ざわついている。
振り返ったレベッカが、不安そうな眼差しでこちらを見ている。
「ぐっ……あ、ははは! よく聞きなさい、王子様、アルベックの民! おまえたちがリドベキア王家の子だと信じているのは、どこの馬の骨かわからない男の子よ! みんなみーんな、ミランダに騙されていたのよ! あはははは!」
拘束されながらも楽しそうに笑っていたヴィヴィアンの前に、ひとつの影が降り立った。シリルだ。
「シリル様……!」
「大丈夫だよ、ミランダ」
声を震わせるミランダに優しく呼びかけてから、シリルはその場にしゃがんでヴィヴィアンに声をかけた。
「元宰相令嬢。今の話は、本当か?」
「え、ええ、そうよ! お父様の部下だった魔術師が、帝城の薬品庫からいろいろな解毒剤を盗み出すミランダの犯行を知ったの! わかったのはかなり後になってからだけど……ミランダは汚らしい恋人に薬を渡した泥棒だし、そいつとの間にできた子をあなたの子だと偽ったのよ!」
「……そうか。……よかった」
「えっ?」
きょとんとするヴィヴィアンを残して、シリルは立ち上がった。
くるりと振り返った彼を正面から見られなくて、ミランダはぎゅっと拳を固めてうつむいたが――
「……ミランダ、大丈夫だ」
「えっ?」
顔を上げると……ふわり、と抱きしめられた。
ミランダを腕の中に閉じ込めたシリルが、震える声を吐き出す。
「元宰相令嬢の証言で、はっきりしたんだ。……君が産んでくれたセドリックは、間違いなく僕の子だ」
「あ……」
「嘘! 嘘よ! なんでそうなるの!?」
万感の想いを込めてささやいたシリルに、ヴィヴィアンが食ってかかった。
「だいたい、たった二日程度城を離れただけでどうやって、王城にいる王子様の子を妊娠できるのよ……」
「……王城じゃないわ」
ミランダはシリルの腕をゆっくりと解き、ヴィヴィアンを見据えた。
……もう、後戻りはできない。言うしかない。
シリルとセドリックの、名誉のためにも。
「子どもがお腹にできたころ、別の男と会っていたのよ! ミランダは王国との戦争真っ最中に城を抜け出して、恋人のところに通っていたの! 城に保管している貴重な薬も、そいつのために使ったに決まっている! だから皇帝陛下の怒りを買って、アルベック城に左遷された――」
レベッカの放った空気砲が腹部に命中し、ヴィヴィアンは言葉の途中で吹っ飛んだ。すぐさま兵士たちが彼女を取り囲んで縛り上げるが――遅かった。
(ばれた……)
ざっと、全身から血の気が引いた。
なぜ、薬をくすねたことまでヴィヴィアンが知っているのかまではわからないが、彼女はミランダの左遷理由を知っている。
彼女には、ミランダが城を空けていた時期とセドリックがお腹にできた時期が一致することも、予想できた。そして……その相手がシリルなはずがない、ということも。
皆が周りで、ざわついている。
振り返ったレベッカが、不安そうな眼差しでこちらを見ている。
「ぐっ……あ、ははは! よく聞きなさい、王子様、アルベックの民! おまえたちがリドベキア王家の子だと信じているのは、どこの馬の骨かわからない男の子よ! みんなみーんな、ミランダに騙されていたのよ! あはははは!」
拘束されながらも楽しそうに笑っていたヴィヴィアンの前に、ひとつの影が降り立った。シリルだ。
「シリル様……!」
「大丈夫だよ、ミランダ」
声を震わせるミランダに優しく呼びかけてから、シリルはその場にしゃがんでヴィヴィアンに声をかけた。
「元宰相令嬢。今の話は、本当か?」
「え、ええ、そうよ! お父様の部下だった魔術師が、帝城の薬品庫からいろいろな解毒剤を盗み出すミランダの犯行を知ったの! わかったのはかなり後になってからだけど……ミランダは汚らしい恋人に薬を渡した泥棒だし、そいつとの間にできた子をあなたの子だと偽ったのよ!」
「……そうか。……よかった」
「えっ?」
きょとんとするヴィヴィアンを残して、シリルは立ち上がった。
くるりと振り返った彼を正面から見られなくて、ミランダはぎゅっと拳を固めてうつむいたが――
「……ミランダ、大丈夫だ」
「えっ?」
顔を上げると……ふわり、と抱きしめられた。
ミランダを腕の中に閉じ込めたシリルが、震える声を吐き出す。
「元宰相令嬢の証言で、はっきりしたんだ。……君が産んでくれたセドリックは、間違いなく僕の子だ」
「あ……」
「嘘! 嘘よ! なんでそうなるの!?」
万感の想いを込めてささやいたシリルに、ヴィヴィアンが食ってかかった。
「だいたい、たった二日程度城を離れただけでどうやって、王城にいる王子様の子を妊娠できるのよ……」
「……王城じゃないわ」
ミランダはシリルの腕をゆっくりと解き、ヴィヴィアンを見据えた。
……もう、後戻りはできない。言うしかない。
シリルとセドリックの、名誉のためにも。