崖っぷち魔術師は嘘をつく~一夜の過ちを犯した相手には、好きな人がいました~
王家の秘密
レベッカたちには城下街の騒動の鎮静に向かってもらい、ミランダは一人、セドリックを抱っこするシリルに続いて廊下を歩いていた。
(どこに行かれるのかしら……)
「毒矢のことだけど」
ふいにシリルが、話し始めた。
「実は、国境での襲撃事件で毒矢が使われたと気づいたのは、ごく最近のことなんだ」
「……そうなのですか? 矢は……部屋に残したはずですが」
ミランダが言うと、こちらを見たシリルはほっとしたようにうなずいた。
「やはり、君が治療してくれたんだな。……そのとおり、矢は部屋に残っていた。それは城に持ち帰ったけれど、毒は検出されなかった。多分、僕の腕に刺さったときに全部剥がれ落ちたんだろう」
……シリルは森で襲撃されたときの記憶が、曖昧らしい。
騎乗しているときに右肩に矢を受けたので、落馬した。彼は帝国兵から逃げていたけれど、だんだん意識がもうろうとしてきて……気がついたら、駐屯地の医務室に寝かされていたそうだ。
彼をぼろ小屋で見つけてくれた騎士曰く、誰かがシリルをここまで運び治療してくれたようだとのことだった。
だが小屋に他の者がいたという痕跡はなく、またシリル本人の記憶が曖昧で矢の毒も落ちていたため、毒の治療までされたことは知らなかった。
「……でも、うちに来てくれた兵士との日常会話で、知ったんだ」
シリルが言うに、かつて王国軍との戦いに動員されて負傷し、アルベック城に留まってから王国に渡ってきた兵士の一人が、「自分がかつて所属していた部隊は、殿下を毒矢によって暗殺するよう命じられていました」と教えてくれたそうだ。
だとしたら、誰が治療してくれたのか。
帝国で作られる毒は特殊なものが多く、その毒に対応する解毒剤もまた帝国でしか作れないことが多い。王子の暗殺なのだから、王国側の技術では解毒できない種類の毒を使ったはず。
だが、シリルは毒を受けたことがわからないくらいきれいに解毒されていた。
となると、治療したのは少なくとも帝国側の――高価な薬品を手に入れられる立場の者ではないか。
だがそれが誰なのかまではわからなかった。
「それが、謎のひとつ。僕たちにとっては、たいしたものじゃないほうだね」
「……たいしたもののほうは?」
(どこに行かれるのかしら……)
「毒矢のことだけど」
ふいにシリルが、話し始めた。
「実は、国境での襲撃事件で毒矢が使われたと気づいたのは、ごく最近のことなんだ」
「……そうなのですか? 矢は……部屋に残したはずですが」
ミランダが言うと、こちらを見たシリルはほっとしたようにうなずいた。
「やはり、君が治療してくれたんだな。……そのとおり、矢は部屋に残っていた。それは城に持ち帰ったけれど、毒は検出されなかった。多分、僕の腕に刺さったときに全部剥がれ落ちたんだろう」
……シリルは森で襲撃されたときの記憶が、曖昧らしい。
騎乗しているときに右肩に矢を受けたので、落馬した。彼は帝国兵から逃げていたけれど、だんだん意識がもうろうとしてきて……気がついたら、駐屯地の医務室に寝かされていたそうだ。
彼をぼろ小屋で見つけてくれた騎士曰く、誰かがシリルをここまで運び治療してくれたようだとのことだった。
だが小屋に他の者がいたという痕跡はなく、またシリル本人の記憶が曖昧で矢の毒も落ちていたため、毒の治療までされたことは知らなかった。
「……でも、うちに来てくれた兵士との日常会話で、知ったんだ」
シリルが言うに、かつて王国軍との戦いに動員されて負傷し、アルベック城に留まってから王国に渡ってきた兵士の一人が、「自分がかつて所属していた部隊は、殿下を毒矢によって暗殺するよう命じられていました」と教えてくれたそうだ。
だとしたら、誰が治療してくれたのか。
帝国で作られる毒は特殊なものが多く、その毒に対応する解毒剤もまた帝国でしか作れないことが多い。王子の暗殺なのだから、王国側の技術では解毒できない種類の毒を使ったはず。
だが、シリルは毒を受けたことがわからないくらいきれいに解毒されていた。
となると、治療したのは少なくとも帝国側の――高価な薬品を手に入れられる立場の者ではないか。
だがそれが誰なのかまではわからなかった。
「それが、謎のひとつ。僕たちにとっては、たいしたものじゃないほうだね」
「……たいしたもののほうは?」