崖っぷち魔術師は嘘をつく~一夜の過ちを犯した相手には、好きな人がいました~
 シリルは迎えに来たリドベキア王国騎士団に付き添われ、王国に帰っていった。

 その後でミランダは、魔術師団長から彼の『留学』についての経緯を聞かされたのだが――やはりシリルは叔父に命を狙われており、何度も暗殺の危機に遭ってきたため十四歳でありながら痩せ細った体をしていて、周りの大人を警戒するような態度を取っていたのだった。

 女王は息子を守るために、旧知の間柄であるメルデ皇帝と密かに連絡を取った。皇帝は王国の現状を憂い、宰相と相談した結果、彼の遠縁のシーグという少年としてシリル王子を引き取ることにした。

 皇帝は、王国で身内から狙われるという悲劇に見舞われた王子を労るべく、様々な身分、立場の者をそばに置かせた。
 同じ年頃の少年だけでなく、老人、子どもなどとも関わることで様々な経験をさせて、帝国で充実した日々を送れるようにした。

 魔術師団からの代表をミランダにしたのも、そのためだった。シリルに姉のように接してくれる女性がいればということで、魔術師団員の最年少であるミランダに彼の世話役を任せたのだそうだ。

「君のおかげで、シリル殿下はあれほど晴れやかな表情で帰国することができた。……本当にありがとう、ミランダ」

 魔術師団長に深々と頭を下げられたミランダは、笑顔で首を横に振った。

「いいえ、私こそシリル殿下と日々を過ごせて幸せでした。素敵なお役目を与えてくださり、ありがとうございました」

 ……本当に、ミランダは幸せだった。

 四年間も一緒にいた弟のような存在との別れは寂しいが、彼にはこれから王子としてきらびやかに過ごす日々が待っている。

 ……リドベキア王国に招いてくれるという約束が果たされるかどうかは、わからない。だがミランダにとって、かわいがってきた少年が幸せになれることが、一番の願いだった。

(どうかこのまま、帝国と王国の関係が良好なもので……いつか、立派に成長されたシリル殿下の姿を見られますように)

 ミランダは、そう願った。

 ……だがその願いは一年後には、儚く打ち砕かれてしまった。
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