クールな華道家は幼馴染に、百花繚乱の愛を告白する。
ほこりたかく、さく
コンクール当日。
私は関係者チケットを持って会場までやってきた。
本日は快晴。
目の前には市内でも有名な、ビジネス・タワービルがそびえ立っていた。
ビル風が私のネイビーのワンピースドレスをそっと揺らす。
この中にある、多目的ホールでコンクールが開催されている。ビルを見上げると肩に力が入ってしまった。
「私が緊張してどうするの。まずはしっかりと二人の作品を見るのよ」
すうっと乾いた空気を肺の中に入れて、ビルへと入って行く。中は磨かれ抜かれた床に高い天井。燦々と降り注ぐ光が気持ちいい。
歩くたびにコツコツと音を奏でるヒールの音を聞くたびに、いつもは動きやすいスニーカーなのにと変な違和感を感じてしまう。
祝日ということもあり、ビルの中でビジネススーツを着た人達たちはあまり見なかった。
でもコンクールの関係者だろうと思わしき、着物を着た人達をチラホラと見かけた。
そんな人達を横切り、目的のホールへとエレベーターに乗り込む。
コンクールは、すでに指定花材部門や生け込みは既に終了している。
そして真っ先に審査の先生達が選考に入る。
そのあと関係者にコンクール参加作品が公開され、明日は一般公開と結果発表となる運びだ。
ぐんぐんと上がるエレベーターの冷たい壁に、こつんとおでこを寄せてみる。
「二人ともどんな、作品を作ったんだろう」
ある程度、お花の手配や生花の練習を見て来たからこんな傾向かなと、予測はいくつかついた。
けどコンクール直前にテーマや根幹を、丸っと変える場合もよくあることだ。
あの二人なら私の予想など軽く超えた作品を作り出すことだろう。
そしてそれを見るのが……
「ちょっぴり怖いな」
この二ヶ月本当にあっという間だった。
二人の気持ちと私自身の気持ちに向き合った時間だった。
その中で出した私の気持ちは──まだ揺れている。
でも、二人の生花を見たら気持ちが固まる予感があった。
「ちゃんと決めないとね」
小さく呟いたのと同時にタイミングよく、エレベーターの扉は開いたのだった。
扉の向こうは着物を着た人達、シックなスーツにモードなワンピースに包まれた、品の良い人達がざわざわとホール前で談笑していた。
ここにコンクール出場者の人達はいない。課題が終われば直ちに家での待機を命じられる。
結果が出るまで、何人たりとも花に触れることは許されないからだ。
特に出場者は明日まで、会場に入ることすら禁じられている。
「そうじゃなくても、きっと大変だったからお家でゆっくりしていて欲しいな」
でも夏織さんはお腹空いたとか言って、いつもと変わらぬ食事をしてそうだ。
馨先生はとにかく爆睡していそう。
そんな二人を想像すると口元が緩み、気負うことなく受付場に足を進めるのだった。
ホールの中に入ると、世界が一気に変わった。
乾いたビルの空気から、植物の力強い香りが私を包んだ。
目の前にすぐにブースに区切られた、それぞれの作者の生花──世界観が飛び込んで来たのだ。
当たり前だが、出場者は橘兄弟二人以外にも居る。参加者の中には有名華道の師範代の人や、昨年の準優勝者など実力者が揃い踏みである。
そんな人達によって私も下見で何回も来ていたホールは、全く別の空間に生まれ変わっていたのだ。
「凄い……お花ってこんな表現が、まだあるんだ」
私はごくっと生唾を飲み込んだ。
私だって、いろんな個展やイベント、コンクールを見て来た。感動もしたし、その技術力を羨んだりもした。
しかし、ここにあるのは圧倒的にレベルが違った。
ぞわりと肌が泡立つ。
──夏織さんや馨先生が負けるかも知れない。
一瞬でもそう思わせる、レベルの高いコンクールだと思った。
そんな不安な気持ちから、今すぐに橘兄弟の名前が飾られたブースに飛んで行きたくなった。
「大丈夫。二人もここに居る人達に負けない実力を、持っているんだから……!」
ふぅと深呼吸をする。
ここは気持ちを落ち着かせるたびに順番通りに、他の人の迷惑にならないように、そろりと見物することにした。
数々の花の色彩。まるで花の饗宴。
そうかと思えば、一色だけの色彩に的を絞った空間に足を止めることもあった。
他の人達もうっとりと見つめていたり、いろんな角度からじっくりと見物する人がいた。
私は関係者チケットを持って会場までやってきた。
本日は快晴。
目の前には市内でも有名な、ビジネス・タワービルがそびえ立っていた。
ビル風が私のネイビーのワンピースドレスをそっと揺らす。
この中にある、多目的ホールでコンクールが開催されている。ビルを見上げると肩に力が入ってしまった。
「私が緊張してどうするの。まずはしっかりと二人の作品を見るのよ」
すうっと乾いた空気を肺の中に入れて、ビルへと入って行く。中は磨かれ抜かれた床に高い天井。燦々と降り注ぐ光が気持ちいい。
歩くたびにコツコツと音を奏でるヒールの音を聞くたびに、いつもは動きやすいスニーカーなのにと変な違和感を感じてしまう。
祝日ということもあり、ビルの中でビジネススーツを着た人達たちはあまり見なかった。
でもコンクールの関係者だろうと思わしき、着物を着た人達をチラホラと見かけた。
そんな人達を横切り、目的のホールへとエレベーターに乗り込む。
コンクールは、すでに指定花材部門や生け込みは既に終了している。
そして真っ先に審査の先生達が選考に入る。
そのあと関係者にコンクール参加作品が公開され、明日は一般公開と結果発表となる運びだ。
ぐんぐんと上がるエレベーターの冷たい壁に、こつんとおでこを寄せてみる。
「二人ともどんな、作品を作ったんだろう」
ある程度、お花の手配や生花の練習を見て来たからこんな傾向かなと、予測はいくつかついた。
けどコンクール直前にテーマや根幹を、丸っと変える場合もよくあることだ。
あの二人なら私の予想など軽く超えた作品を作り出すことだろう。
そしてそれを見るのが……
「ちょっぴり怖いな」
この二ヶ月本当にあっという間だった。
二人の気持ちと私自身の気持ちに向き合った時間だった。
その中で出した私の気持ちは──まだ揺れている。
でも、二人の生花を見たら気持ちが固まる予感があった。
「ちゃんと決めないとね」
小さく呟いたのと同時にタイミングよく、エレベーターの扉は開いたのだった。
扉の向こうは着物を着た人達、シックなスーツにモードなワンピースに包まれた、品の良い人達がざわざわとホール前で談笑していた。
ここにコンクール出場者の人達はいない。課題が終われば直ちに家での待機を命じられる。
結果が出るまで、何人たりとも花に触れることは許されないからだ。
特に出場者は明日まで、会場に入ることすら禁じられている。
「そうじゃなくても、きっと大変だったからお家でゆっくりしていて欲しいな」
でも夏織さんはお腹空いたとか言って、いつもと変わらぬ食事をしてそうだ。
馨先生はとにかく爆睡していそう。
そんな二人を想像すると口元が緩み、気負うことなく受付場に足を進めるのだった。
ホールの中に入ると、世界が一気に変わった。
乾いたビルの空気から、植物の力強い香りが私を包んだ。
目の前にすぐにブースに区切られた、それぞれの作者の生花──世界観が飛び込んで来たのだ。
当たり前だが、出場者は橘兄弟二人以外にも居る。参加者の中には有名華道の師範代の人や、昨年の準優勝者など実力者が揃い踏みである。
そんな人達によって私も下見で何回も来ていたホールは、全く別の空間に生まれ変わっていたのだ。
「凄い……お花ってこんな表現が、まだあるんだ」
私はごくっと生唾を飲み込んだ。
私だって、いろんな個展やイベント、コンクールを見て来た。感動もしたし、その技術力を羨んだりもした。
しかし、ここにあるのは圧倒的にレベルが違った。
ぞわりと肌が泡立つ。
──夏織さんや馨先生が負けるかも知れない。
一瞬でもそう思わせる、レベルの高いコンクールだと思った。
そんな不安な気持ちから、今すぐに橘兄弟の名前が飾られたブースに飛んで行きたくなった。
「大丈夫。二人もここに居る人達に負けない実力を、持っているんだから……!」
ふぅと深呼吸をする。
ここは気持ちを落ち着かせるたびに順番通りに、他の人の迷惑にならないように、そろりと見物することにした。
数々の花の色彩。まるで花の饗宴。
そうかと思えば、一色だけの色彩に的を絞った空間に足を止めることもあった。
他の人達もうっとりと見つめていたり、いろんな角度からじっくりと見物する人がいた。