クールな華道家は幼馴染に、百花繚乱の愛を告白する。

「ゆ、優勝っ!? 凄いっ! 馨ちゃんおめでとうっ!」

「優勝するって、言うたやろ」

自分が優勝したわけじゃないのに、喜びが胸から溢れてくる。
夏織さんが優勝してもおかしくなかった。他の人だって、凄く頑張っていた。
けれども選ばれたのは馨ちゃん。
この二ヶ月間のことが蘇って、胸が熱くなった。

「本当におめでとう。私、少しでも手伝えたこと誇りに思うよ」

「皆に手伝って貰ったからこそ、優勝せんとな。本当に、ありがとう」

耳元で囁かれ、馨ちゃんの背中に回った腕にきゅっと力が入ったのが分かった。
緊張して口が硬くなる。
馨ちゃんは優勝した。
ならば私も、ここに来た理由を、気持ちを。ちゃんと言わなきゃと思ったら。

「これで心おきなく言えるな。立花。好きや」

と、馨ちゃんに言われた。

「……え」

馨ちゃんの気持ちは知ってはいたが、馨ちゃんの口から聞くのは初めてで、驚いてしまった。

「もう知ってると思うけど、改めて言わせてほしい。僕は昔、立花に告白されて、素直に受け止めることが出来なかった。それは兄貴へのコンプレックスと、僕は立花の『許嫁』じゃないということ。そんな気持ちから、立花の想いを素直に受け止めることが、ずっと出来ひんかった。ごめんな」

「かおる、ちゃん……っ」

「でも、ずっと兄貴と立花。そして僕。三人で居ることがホッとしている自分がおった。仕事も華道も兄貴とは違う道を模索してきたのに、三人の関係だけは変わらずに、まるでぬるま湯に浸かって満足してる自分に気が付いた。このままやったら、ずっと僕はずるいままな気がした。それはアカンって思ったんや……」

変わりたい。
それがコンクールに参加した理由だと、馨ちゃんは言った。私も同じ気持ちだった。
このままがいいと思っていたことや、『許嫁』という言葉に流されそうになったことを言った。

「馨ちゃん、私の話も聞いてくれる? そのためにここに来たの」

「もちろんや」

優しく頭を撫でられて、胸が熱くなる。
私も馨ちゃんの背中に手を回す。

「私もね、自分の気持ちを有耶無耶にしてた。きっとその方が傷付くことがなかったと思うから。それをずーっと、続けてきた。だから、馨ちゃんを好きになったのか、それさえも──忘れたふりをしてきたの」

気持ちが溢れて、口調が早くなったとき、馨ちゃんがあやすように背中をとんとんと、優しく撫でた。

「ゆっくり喋り。大丈夫やから」

その言葉に一度、深呼吸をした。
馨ちゃんの胸に頬をつけて、そっと喋る。

「けどね、馨ちゃんのコンクールの作品を見て思い出した。馨ちゃんには夏織さんという、凄いお兄さんがいるのに、馨ちゃんはずっと負けないように頑張っていた。それはとてもカッコよくて──眩しくて。だから好きになったって、思い出した」

「立花……」

そうなのだ。
馨ちゃんに感じていた眩しさは、努力するひたむきさ。私はその姿に憧れを抱き、恋をした。
ここ二ヶ月で馨ちゃんに時折感じていた眩しさは、私が有耶無耶にした恋心そのもの。
それを思い出させてくれたのが、コンクールで見た馨ちゃんのあの、白百合だったのだ。

夏織さんの生花もとても感動した。
素晴らしいと思った。
でも、私の心が動いたのは馨ちゃんの生花だった。

涙がポロポロと落ちる。
それは晴れやかなもので、長年知らずに溜まっていた心の澱みが消えていくようだった。
その涙を馨ちゃんは指先でそっと拭ってから、コホンと咳払いした。

「立花、長い間待たせてごめんな。今僕に出来る限りの花を集めてみた。ここにある花達が足りなかったら、この十倍、百倍でも花を用意する。立花の為なら僕の一生を使ってでも、世界中の花を集めてくる。だから立花──結婚を前提に、僕の婚約者になってほしい」

「──!」

「そして、結婚しよう」

花に囲まれてのプロポーズ。
それは昔の私が望んだプロポーズだ。
この人はこの為に、コンクールが終わったあと、私が来ると信じてくれて、このお花の空間を作ってくれた。
なんて自信家で、なんて素敵な人なんだろう。
眩しくて目が離せない。

「馨ちゃん、私も馨ちゃんが好き。絶対に結婚しようね」

「立花、愛してる」

「私も」

馨ちゃんの唇がそっと、私に近づく。
私も目を閉じる。
瞼の裏には近い未来、たくさんのお花に囲まれて、挙式を挙げる私達を早くも想像してしまい、胸を膨らませるばかりだった──
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