ただ今の先に、何度でも恋に落ちる2人がいる。
電車がゆっくりとカーブに差しかかった。

ドア脇に肩を預けていた凛の身体が、わずかに揺れる。

無意識に足元へ重心を移した。

毎朝、同じように繰り返している内に自然と身体が覚えた受け身の仕草だった。

乗り慣れた半蔵門線。

このあたりまで来ると、皇居を回り込んで大手町へ向かっていることを、凛はなんとなく感じ取っていた。

東京の真ん中には、皇居がある。

高層ビルが立ち並び、幾重にも道路が交差するこの街で、そこだけは広い緑と水に囲まれ、別の時間が流れているように見える。

その周囲を、地下鉄が走っている。

東京メトロ半蔵門線。

渋谷から都心へ向かって延びてきた線路は、永田町を過ぎると北へ向きを変え、半蔵門、九段下、神保町を経て、再び東へと向かう。

地図を広げて眺めれば、皇居の西側から北側を回り込むように描かれたその線形は、ギリシャ文字のΩにも似ている。

東京の中心を一直線に突き抜けるのではなく、その周囲に広がる街を結びながら進んでいく。

古くからそこにあるものと、新しく必要になったもの。

東京という都市は、そんな二つを重ね合わせながら、少しずつ現在の姿になってきた。

その地下を、一本の電車が走っていた。
< 5 / 6 >

この作品をシェア

pagetop