孤独なあなたに、夕食を。 〜食べられないCEOの胃袋を掴んだら本気の口説きが始まりました〜
「え……」

唐突な告白に、アランが提案したゲームに疑問が生まれたものの、しかしそれ以上に彼の身体が気になった。

「いつもは、どうしていたんですか?」

「普段はゼリーとスムージーだ。嫌でも腹は減るからな……でも実際、食事ってのは、俺の中で一番の苦行だよ」

まるで義務のように燃料補給していたアランに、由香は危うさを感じ掌を握り締めた。

――食事が苦行って、どうして。

由香にとって食事とは幸福なものだ。
苦痛に感じるのは、彼の体質由来のものなのか、それとも、咎める何かがあるのか……。

「じゃあ、なんで料理なんて……」

「他の奴らは大抵、楽しそうに食事するだろ?羨ましいじゃないか」

言ってアランは口角を歪に持ち上げた。

――この人、食べること自体が嫌いなわけじゃないってこと?

美しいのに、どこか荒んだ雰囲気を醸すアランの根底を映し出すような答えだった。

「でも君の料理は気持ち悪くない。まぁ、全部は食えないけどな……」

自嘲気味に告げると、アランは視線を落とし、もうひと口、親子丼をすくっては咀嚼する。
それから不思議そうに首を傾げた。

「日本食もパーティーで食べた事はあるのに不思議だ。どこか趣が違う。ま、好きと言っていいのか分からないが……」

何が彼をそんな風にさせたのだろう。
褒められているのに、胸の奥がざわりとする。

食に対する敷居の高さがあまりにかけ離れていて心配になるのだ。

つい先日出会ったばかりの相手だというのに、放っておけない気持ちになるのは由香の性格のせいか、それともこの寂しげなアランに引き出された感情か。

「つまり、そういうことだ。明日は弁護士も交えて君のビザについて相談しよう。おそらく俺個人で君を雇うのは発給が難しいだろうから、会社で雇い入れることになるだろうな」

アランは親子丼の香りを嗅ぎなら言った。
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