孤独なあなたに、夕食を。 〜食べられないCEOの胃袋を掴んだら本気の口説きが始まりました〜
「疑っているわけじゃないですが、インターンとして私が所属したうえで、アランさんの食事に関わることが合法なのかは心配で……」

アメリカに残りたいとは思っているが、当然グレーなことはしたくない。

「大丈夫だ。そろそろ社食の導入を考えていたところだしな」
「本当ですか?」

「あぁ。うちの社員は美意識の高い連中ばかりだが、ニュー・アローのコンセプトは“内なる美を解き放て”。内面の美は、食事による健康が大きく反映されると聞く……まずは社員の健康管理から美を追求するってことで、なにも君のためだけじゃない。ホワイトな手続きだ」

アランはもっともらしく言ってイーサンに視線をやる。
するとイーサンは深く頷き、柔らかな笑みを零した。

「問題ありませんよ。アランの会社にはインナービューティー部門が元々あるので、安心してください。プロジェクトの一環で被験者に食事を提供することは業務内ですし、彼の言い方なら日中はデスクワークもあることでしょう。とはいえ……」

イーサンは言葉をそこで切った。

「むしろあなたが、それで構わないかが僕は心配です。アランの中には色々と構想があるようですが、あなたが求めているものから飛躍してませんか?観光ビザに切り替えて他の企業でインターン先を探す手もあります」

言われて由香は視線を伏せた。
ひとまず観光ビザに切り替えて、インターン先を探すことは元々考えていた。

しかし自分の経験が活かせる職場で雇ってもらえるかは分からない。

アランの提案は、いきなり一大プロジェクトを与えられたようで身構えたが、由香にとっては願ったりかなったりなのだ。

「いえ。今までの経験を活かして働けるなら、有難いことなので……それに……」

――食事が苦行と明かしたアランが、食べてくれた。

アメリカで働きながら、彼に食事を提供できるなら、挑戦してみたい。
由香は視線を上げ、二人を見遣った。

「内面の美は、食事による健康が大きく反映されるというのは、私も共感します」

心の豊かさは、その人物の地の性格だけの問題ではない。
完全ではないけれど、心の揺らぎは栄養が支えてくれると由香は信じている。

人の心は食べたもので出来ているから。

「なら決まりだな。イーサン、プロジェクトチームの編成が決まり次第すぐに共有する。申請準備を急いでくれ」

「分かりました。研修計画書と必要書類を整えます。では一先ず、申請手続きに向けて由香さんに揃えていただきたい書類のリストがこちらです。準備は大変でしょうが、一緒に頑張りましょう」

まるでこうなると分かっていたように既に用意されていたリストを手渡され、由香は生唾を呑み込んだ。

新しい挑戦に、心の奥が震えていた。
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