孤独なあなたに、夕食を。 〜食べられないCEOの胃袋を掴んだら本気の口説きが始まりました〜
――――そんなトラウマに付き纏われ、自ずと栄養ゼリーなどを選ぶようになった。

皮肉なことに、どれだけ食べることが嫌でも、身体を動かせば腹は減るのだ。

そんな日々が日常と化していたある日、朝霧由香と名乗る日本人が作ったものを、アランの身体は受け入れた。

偶然か、ただ日本食が食べやすかっただけかは分からない。
ただ、柔らかな奥行きのある香りに、拒絶反応がなかった。

彼女に声をかけたのは単なる出来心。

最近開催されたチャリティパーティーの会場で、ぶつかった女性に似ていたのでバーで声をかけ、ナンパした。

しかし料理を作ってもらおうとしたのは、どこか期待をしていたからかもしれない。

物憂げな表情があの夜と重なって、自分と同じタイミングでささくれている人間に、ちょっとした親近感が湧き、「抗ってそう」だと何気なく言い当てられたことが少しだけ嬉しかったのだ。

なぜならアランの人生は、常に何かに抗っていたからだ。


従兄弟のリアムは、幼少期から才能に溢れ、いつだって自然体のまま周りから愛された。

我儘で、尊大な態度を取るくせに、結局みんな許してしまうのだ。

俳優だった父の伝手でリアムと一緒に映画の撮影を観に行った時も、リアムは堅物監督に気に入られ、ちょっとした役をその場でもらっていた。

母は、アランが高校に入学する頃にはリアムを越えろと言わなくなって、見習えと言い始めた。


『去年の展示会でリアムに勧められて買った絵だけど、すごいのよ。あの作家引っ張りだこなの。値も吊り上がっているし、リアムに審美眼があるって噂は本物ね』


リアムはすごい、リアムを目指せ、リアムならこうするはず、あなたも彼と同じように……――――その言葉がリアムに対する憎悪を抱かせる。

アランが才能に溢れるリアムとの壁にもがいていることなど、きっと誰も知らない。
気にかけてもらったことなど一度もない。

それでも、母や父から愛を乞うため抗って生きたが、高校のプロムでキングに選ばれてステージに上がるリアムを見て現実を知った。

何も手にすることは出来なかったのだと。


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