孤独なあなたに、夕食を。 〜食べられないCEOの胃袋を掴んだら本気の口説きが始まりました〜
しかし、――――抗うためには食事が必要で、食事は人生に付き纏う。

故に、毎日の苦行が、もしかすると由香を通して変わるかもしれないと、そんな淡い期待して彼女を会社に雇い入れることにした。

いつか、他の人間と同じように、笑いあって食事を楽しみたい。
小さくて重い願いだ。

由香は一度抱いた相手だが、今はただ、能力を買っているだけ。
彼女だって気にした様子はなく、無事にビザの申請が通ったあとは入社して研修計画の通り働いている。

その業務の一環として、毎日夕食の提供があり、オープンキッチンに彼女が立つ姿は日常になりつつあった。



「もう少し具体的に感想をいただけませんか?”悪くない”だけじゃ検証にならないじゃないですか」

その日、由香はわざわざ印刷したアランのレビューを食卓テーブルに置いた。

ゆくゆくは検証を元に社食を導入するプロジェクトということで、由香が作った食事に対する簡易レビューを数日まとめてメールで送っていたのだが、それが不満だったらしい。

「味が薄いとか、書いてるだろ。切ってくれた方がいいとか。それに血液検査に他の検査だって身体を張って毎週している」

”他の検査”と言葉を濁したが、いわゆる検便だ。

イーサンの嫌がらせか、腸内環境の改善をインナービューティー食など銘打って研修計画書にこっそり捻じ込まれ、強制的にやらされている。

真面目に協力していると主張すれば、由香は疎ましそうに眼を細めアランを見た。

最近の彼女は、出会った時よりも遠慮がない。
料理をしている姿を観察していると、手が空いてるなら食器を取ってくれと言われ、一人で食べるのは寂しくないかと勝手に花を持って来たりする。

「もう、いいですよ。今日から食べ終わるまで居させてください。顔見て判断します」

今日に至っては、ついにアランのレビューに懐疑的になって対面に座った。

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