孤独なあなたに、夕食を。 〜食べられないCEOの胃袋を掴んだら本気の口説きが始まりました〜
「え、なんですか?その顔」

ふと、由香の視線が上がり目が合って、すぐに唇を引き結んだものの尋ねられた。

「なんでもない」
「私なにか変なことしてます?」

「だから、なんでもないと言っただろ。それよりこのアサリは癖が強すぎる。もっと何か誤魔化せないのか?」

追及を避けるために感想を零すと、由香はすぐにそちらへ意識を向けた。

「そうですね、じゃあ先に甘辛く煮込んでおこうかな……」

ぶつぶつと呟き頭の中で何か組み立てているようだ。

――真面目かよ。

かと思えば、今度はアランそっちのけで、メモにペンを走らせはじめる。
その姿に、いよいよおかしくなって箸を置いて彼女を見つめた。

すると再び目があって、由香は言う。
「あの、色々言いましたけど、気分じゃなかったら食べなくて大丈夫ですからね?」

「あぁ、悪い。考え事をしていただけだ」

「そうじゃなくて」
「ん……?」

「無理はしないで良いんですよって意味で、急かしたわけじゃないです。アランさんのペースで大丈夫ですから。義務みたいになったら、嫌ですよ。食事が楽しめなくなっちゃうので」

その言葉に、幼い自分に肩を叩かれた気がした。
多分、ずっと……誰かにそう言って欲しかったのだ。



この日をきっかけに、毎回検証のためと面と向かって居座るようになった彼女を、アランはいつしかもっと引き止めたいと思うようになるのだった。
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