孤独なあなたに、夕食を。 〜食べられないCEOの胃袋を掴んだら本気の口説きが始まりました〜
家を出るほど駆り立てた感情の奥に、きっと食べられなくなった原因が潜んでいる。そんな気がして、抱きしめたくなったのだ。

今はただの雇用関係で、食事を提供する一社員なのに。

「あら。そろそろ時間じゃない?頑張ってね」

「はい。行ってきます」

サマーに促され時計を見た由香は、アランのホテルで料理を作るため会社を後にする。

タクシーで移動するその道中、スマホが震えた。

電話かと勘違いして急いで確認すると、メールが一通。

差出人は元カレである亮介だった。

通知タブに表示される冒頭は『ニューヨークに来たから会いたい』と書かれてある。

――まさか、どうしてこっちまで来てるの?

そう始まる文章に立ち止まり、メールを開封すると気になる内容が綴られてあった。

『由香が失くしたって言ってたピアス、見つけたんだ。お祖母さんの形見だって言ってたよな。せっかくだから渡したいんだ』

それは、大切な日や勇気を出したい日にだけ身に着けていたピアス。

食事の楽しさや、大切さを教えてくれた祖母から貰ったもので、渡米の相談を亮介にした日にもつけていた。

結局その夜に喧嘩して別れ、家に帰った時に失くしたことに気付いたが、状況が状況なだけに直ぐには亮介に尋ねることが出来なかった。

諦めていたものが、見つかったと知って心が迷う。

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