孤独なあなたに、夕食を。 〜食べられないCEOの胃袋を掴んだら本気の口説きが始まりました〜

⑨見つけたのは (※アラン視点)

料理が出来上がった頃、来客を知らせるインターホンが鳴った。

誰が来たかは大方の見当がついている。

滞在先のホテルを変えても勝手に調べ、毎年クリスマスが近付く頃にやってくるローザ・ウィルソン、ーー母親だ。

「邪魔しかしないな……待っててくれ」

由香以外にこのホテルを自ら訪ねてくる人間なんてそう居ない。

クリスマスという時期も時期だけに決めつけたアランは食卓を一瞥した後、扉へと向かった。

開けばやはり、ローザだった。

「今度のホテルはそこそこね。フロントの眼鏡の男の喋り方が鼻についたけど……ねぇ、アラン、こんなつまらない部屋で過ごしてないで、今年のクリスマスこそ帰ってきてちょうだい」

今年も彼女は目立ちたがりを体現するようなギラギラとした光沢感のある服を着て、自分の息子の顔を見るなりホテルマンへの苦情を零す。

そして許可も出していないのにツカツカと勝手に中へ入り、減点方式の採点主義者であるローザはため息をついた。

「絵ぐらい飾ったら良いのに、相変わらず質素ね。壁紙もなんだか……五十数階程度じゃこんなものかしら……」

「依頼してない評価をどうも。俺はこの質素な場所でクリスマスを過ごすから、さぁ、Uターンしてお引き取りを」

由香に鉢合わせはさせたくない。

この癖の強い女は、ズケズケとした物言いで他人を攻撃するのが好きなのだ。

しかしローザは一度立ち止まったものの、通路の奥の香りを嗅いでは再び歩き出してしまう。

「クリスマスは家族で過ごすものよ……あら、食事中?私も食べて帰ろうかしら」

「おいっ……!!」

アランは声を荒げたが聞く耳を持たない。

「……ホテルの方、じゃなさそうね。お友達?それとも秘書かしら?」

由香を見たローザは無遠慮に尋ねた。それはアランに向けてか、由香自身に向けたものかは分からない。

けれども品定めする視線に敵意を孕んでいる事だけは確か。

「俺の大切な人だ。帰れと言っただろ、邪魔しないでくれ」

「大切な人……?冗談は止めてちょうだい」

由香は突然現れたローザの不穏な物言いに対して困惑しているようだった。

それもそうだろう。

つい先ほど想いを返してくれたばかりなのに、謎の女の登場に、否定的な発言。

誤解される事だけは避けたい。

「由香。彼女は俺の母親だが、この人の言うことは無視してくれ。すぐ帰らせる」

そして扉の方へ促すためローザの背に手を添え、言いい含めた。

「母さん、そんなに喋り続けたら喉が渇いたろ?自分の家に帰って水でも飲めよ。あんたに振る舞うものはここに無いし、クリスマスも絶対に帰らない。もう来ないでくれ」

アランは声のトーンを落とした。

しかしローザにはあまり効果がなく、彼女は頬を引き攣らせたのは一瞬で、呆れた顔を向けたあとに思い出したと言わんばかりに捲し立てる。

「結構よ。……またリアムの真似をしてるのね。あの子が日本人の芸術家と結婚するからって。みっともないから止めてちょうだい。クリスマスには、あなたに会わせたいお嬢さんがいるのよ。私の母校のサロンの会長も務めた子でね……」

瞬間、腹の奥底に封じていたどす黒い感情が渦を巻いて、沸々と蓋を押し上げ始める。

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