孤独なあなたに、夕食を。 〜食べられないCEOの胃袋を掴んだら本気の口説きが始まりました〜
散々、姉を羨み、息子を従兄弟と比べ、彼を目指せと言ってきた彼女だが、リアムに婚約者が決まり、大方妻のステータスだけなら勝てるとでも考えているのだろう。

家を出た日と同じ、心が爆発する兆しを感じ、アランは手の平を握りしめ言葉を飲み込む。

ーー冷静になれ。

ここで怒鳴ったりすれば、由香を怖がらせることになる。
それが分かっているのに、喉の奥が怒りで震える。

ーー落ち着け。

ちゃんとフォローしなければならない。

なのに、適切な言葉が見つからない。

実家のことになると、いつだって心は掻き乱され、余計な言葉で他人を傷つけてしまう。

そんな自分を、由香には見せたくない。

しかし、ローザの言動に激しく反応してしまう心が張り裂けそうだ。

すると唐突に、由香が言葉を遮るようにローザに話しかけた。

「あの。アランのお母様……私は朝霧由香と申します」

アランの中にあった沸騰寸前の感情は、由香の穏やかな声で我に返る。

「自己紹介は結構よ。どうせ直ぐに別れるでしょうし。それともあなた、華々しい経歴や名家のご出身?アランにはロングアイランドの由緒ある娘が相応しいと思うのよ。同じぐらい価値がなければ、時間の無駄だわ」

相変わらずの悪態。
しかし由香は臆することなく尋ねた。

「彼とこの先どうなるかは分かりませんし、私は一般家庭の人間ですが、一応礼儀として。せっかくいらしたらんですから、立ち話もなんですし、食べて行きませんか?」

「……必要ないわ。取り入ろうとしたって無駄よ」

「そんなつもりないですよ。……お互い知らない者同士なので、食事をしながら知りたかっただけです」

毅然とした瞳で由香は告げ、その姿に、心が震える。

アランは固く握りしめていた手を解き、ローザを静かに見据えた。

「……母さん。これはリアムの真似じゃない……彼女は俺が見つけたんだ」

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