孤独なあなたに、夕食を。 〜食べられないCEOの胃袋を掴んだら本気の口説きが始まりました〜
とんでもなく重い荷物を急に投げ渡されたような感覚に深く息をついたが、しかし立ち止まっていてはいけない。
この状況はなるべく早く真奈の両親に共有しなければ。

由香は力の抜ける身体を奮い立たせ、会場の出口に向かうため歩き出した。

すると、肩が誰かとぶつかった。

「失礼……」

「わ、ごめんなさい」

振り返り謝罪すると、髪をオールバックにして後ろで結ぶ金髪男性もまた由香を振り返る。

彼は不機嫌そうに眉根を寄せており、殺伐とした雰囲気を醸していた。そして、ひと目で分かるほど目元の隈が酷い。

二人の視線は交わったが、一瞬。

ぶつかった衝撃でシャンパンがグラスから溢れ由香の胸元を濡らしていたのに、それに気付いた時にはもう彼は居なかった。

ーー散々だ。

アルコールの香りを纏いながら由香は鉛のような心で会場を後にしてアパートへ帰る。

それから後日、社長夫妻から連絡を受けて由香はさらに衝撃的なことを知った。

なんと真奈が妊娠していたのだ。

これはいよいよ、同棲だけの問題では無くなり、社長夫妻もニューヨークまでやってきて、例の恋人と真奈の結婚が決まった。

あっという間の出来事で、由香は社長から振り回して申し訳ないと謝罪されたが、むしろ居た堪れない気持ちになっていた。

夢を追ってニューヨークへ来たはずなのに、真奈はあれで良かったのだろうか。

若いといえど相手は成人女性。
プライベートな時間まで口を出す必要はなかったが、しかし日本を飛び出したばかりの彼女が恋に人生を捧げる前に、相談してもらえるぐらい親密な関係を築けなかった自分にも問題があったのではないか。

憶測から生まれる罪悪感にはなんの意味もないが、しかし由香の中に沈殿する。

それになにより、ーーーー日本には、同じ会社に元彼がいる。

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