極東4th
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「おかあさん!」

 早紀は、枕もとの写真にとびついた。

 ベッドのスプリングで、身体が変な方向に跳ねて、腕をぶつけながらも写真立てを抱き上げる。

「お母さん! お母さん!」

 ついさっき。

 信じられない話を聞いた。

 廊下で。

 見知らぬ魔女の写真を見て、修平が言ったのだ。

『これ、君のお母さんじゃないか』、と。

 違う!

 早紀の母は、この写真の女性だ。

 あの写真の魔女など、会ったことも見たこともない。

 何故、そんなデタラメを言うのか。

 早紀は、叫んだ。

 自分でも、あんな大声が出せるとは思わなかったくらい。

 にこにこと笑う、写真の中のおかっぱの女性。

 子供の頃の、記憶を早紀は引っ張り出そうとした。

 ぼやけすぎて、はっきりしなくなっていく思い出。

 母親はこの人だと、疑うことさえ出来ないのに、鮮烈な記憶が何も甦ってはこない。

 きっと、修平の勘違いだ。

 そうに違いない。

 自分のぼんやりした記憶に耐え切れず、早紀はそう思い込もうとした。

 そうだ。

 真理なら、彼女の母親のことを知っているのではないか。

 修平の勘違いを、彼ならひっくり返せるに違いない。

 もしも。

 修平の言うことが正しいのなら──おそろしいことだが、もしもそうなら、その理由だって彼は知っているのではないか。

 早紀の記憶は曖昧だ。

 しかし、この写真の女性に、自分が強い愛情を覚えているのだけは間違いない。

 その愛という感情に奮い立ち、早紀は写真立てを持ったまま、真理の部屋に直行した。

 強い決意でノックをする。

 返事は──なかった。

 不在だったのだ。

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