極東4th
 修平が真理に差し出したのは、あの母親の写真──ではなかった。

 彼の言葉にショックを受けた早紀が、写真を置き去りにして部屋に駆け込んでしまったらしい。

 写真の中にいるのは、騒々しそうな魔女。

 早紀とは、似ても似つかない。

「これが…母親か?」

 真理は、眉間をせばめながら従兄に聞いた。

「そうだよ…あの子を連れてきたのは、うちの両親だからね。母親の魔女のことは、ちゃんと調べてあるさ」

 名前は──貴沙(きさ)。

 カシュメルの、遠い血筋。

 そう説明する修平の言葉が本当ならば、早紀の部屋の写真は誰なのか。

 あの、魔女らしくない女。

「別の女を、母親だと思っていたのか」

 それ以外、真理には考えつかなかった。

 この写真を、どうひっくり返しても、早紀の部屋の女にはならないのだから。

「さあ…よく分からないね。うちの親の遺品を整理すれば、何か資料があるかもだけど」

 何しろ、大事な鎧のイケニエだろう?

 ちゃーんと調べてあるはずさ──そう、修平は言うのだ。

 早紀の両親は、どちらも魔族だ。

 そう真理は、彼女に告げた。

 それは、彼が両親のことを調べた、という言葉でもある。

 その嘘を保守するためには、真実の母親のことくらい知る必要があるかもしれない。

 あの早紀が、大声を出すほど衝撃を受けたのである。

 真理に、聞きにくる可能性があった。

 最近の早紀は、彼を驚かすことをするからだ。

「遺品を…見せてもらおう」

 真理は、写真を机に置いた。

「今からかい?」

 意外そうな修平の言葉には答えず、黙ったまま意思を伝える。

「…分かったよ、当主殿」

 苦笑しつつ部屋を出る、修平について歩き出した。

「憑き魔女ってのは面倒だね…鎧に押し込んだまま、出さなきゃよかったと思わないかい?」

 前をゆく修平は、振り返らないまま真理に軽口を叩く。

 余計なお世話だな。

 真理は──答えなかった。
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