極東4th
「こ…子供?」

 現実味のない単語を、早紀は繰り返していた。

「ええ…次の鎧を、継ぐ者が必要ですから」

 しかし、零子は当たり前のように言葉を続ける。

 んーと。

 早紀は、出来るだけ彼女の言葉を、オブラートにくるんで考えることにした。

 要するに。

 真理を囲んでいる女性たちは――彼のお嫁さん候補、ということか。

 なるほど。

 だが、納得はするものの、ひっかかるところもある。

「でも、何で前から騒がなかったのかなあ」

 真理が、鎧の継承者であることが、隠されてでもいたのだろうか。

「先日の戦いで、これからしばらく魔族の勝利を確信したからでしょう…魔女は強い者が好きですから」

 さりげなく、零子は容赦なかった。

 ぷっ。

 意味を理解した早紀は、軽く吹き出してしまう。

 階級が高いだけでは、魔女は群がらない、と。

 あの真理が、いままで彼女らに品定めされていたと言うのだ。

 ようやく、お眼鏡にかなったというところか。

 その栄誉の歓迎を、真理は押し退けるように校舎へと向かってしまった。

 トゥーイは、まだ囲まれたまま。

 だからだろうか。

 零子は、ここを離れる様子はない。

 ガラス玉のような瞳で、魔女たちを見ている。

「お嫁さん候補に…興味あります?」

 早紀は、ちょっとだけ気になった。

 彼女の瞳は、トゥーイというより、そっち中心に向いている気がしたからだ。

「そうですね…死ぬまで一緒に暮らす人になりますから」

 淡々と、零子は答える。

 そっかあ、奥さんになる人とこの人は、一緒に暮らさなきゃいけな……あれ

 え?

 いま考えていたことは、零子だけの問題ではなかったのだ。

 間違いなく――早紀も同じ立場だった。
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