極東4th
 何と言う、小姑プレイ。

 早紀は、どんよりしながら授業を受けていた。

 朝の零子との会話が、頭にこびりついて離れないのだ。

 キツそうな人、多いんだよなあ。

 穏やかとか優しそうなとか、そういう肩書きを持っている女性とは、なかなか出会えない。

 何しろ、この学校の女性は、みな魔女だというのだから。

 零子も、ぼんやりとしてはいるが、ボケというわけではない。

 戦いの関係で、魔力を消耗していることで、あの気だるさが出ている可能性もあった。

 その証拠に、今朝の状況判断は的確だ。

 魔女たちの考えも分かっているし、鎧の持ち主が、早く子孫を残さなければいけないことも──妻になる人間と、自分が暮らす必要があることも、きちんと把握していたのだから。

 絶対、いじめられる。

 真理に鎧としてコキ使われ、その妻にいじめられる図は、容易に想像が出来た。

 強制的に鎧にさせられた早紀は、自分の今後一生全部を、真理に捧げなければならないことまで、深く考えてはいなかったのだ。

 屋敷を出て、一人で暮らす。

 そんな、ささやかな考えも、簡単に吹き飛んでしまった。

 どこかに、優しくて階級の高そうな魔女っていないかなあ。

 早紀は、ロークラスしか知らない。

 いわゆる、庶民の魔族のクラスだ。

 そのせいもあって、本当にみな風変わりで怖い。

 一方、ハイクラスの生徒たちとは、口をきくのも考えられなかった。

 もし真理が親戚ではなく、一緒に暮らしていなかったら、やはり口はきけなかっただろう。

 真理のことだから、きっと家柄は重視するだろうなあ。

 となると、ハイクラスの相手に間違いない。

 せめて。

 せめて、私を無視してくれる人ならマシ。

 そこまで考えて。

 早紀は、はたと思い当たることがあった。

 あれ、そう言えば私、人に無視される能力があったような。

 結構──それは、便利かもしれない。
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