きみが窓を見なくなるまで
廊下で、誰かが友達を呼んだ。

階段を駆け下りる音。

教室から聞こえる、先生の声。

全部、急にはっきり聞こえた。

私は高木くんの顔を見たあと、すぐに目を下げた。

「……ありがとう」

鞄の持ち手を握る指に、少し力が入る。

彼は返事をしなかった。

足元の影が動かない。

顔を上げると、高木くんは横を向いていた。

廊下の先を見ている。

耳のあたりに、夕方の光が掛かっていた。

「じゃ、俺、返してくる」

「あ、うん」

彼が歩き出す。

私は、その背中へもう一度何か言いたくなった。

でも、言葉になる前に距離が空いた。
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