きみが窓を見なくなるまで
「妃菜、ごめん。待った?」

みなみが教室から出てきた。

私は少し遅れて振り返る。

「ううん」

「何の話かと思ったら、日直ノート。書く場所、一段間違えてた」

「直せた?」

「うん。矢印で」

みなみは空中に大きな矢印を書いた。

私は笑った。

さっきまで返事の仕方がわからなかったのに、今は自然に笑えた。

「帰ろ」

「うん」

歩き出すと、髪が後ろで揺れる。

朝は、その動きが気になって仕方なかった。

今は少し、好きだった。

みなみが私を見る。

「なんか、うれしそう」

私は前を向いたまま、鞄を持ち直した。

「……そう?」

「うん」

否定する言葉が、出てこなかった。
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