きみが窓を見なくなるまで
書庫から先生が戻ってきた。

抱えていた資料を机へ置く音に、私は顔を上げた。

「佐々木さん、これ、入口に置いてもらえる?」

「はい」

声が、少し掠れた。

私は立ち上がり、渡された冊子を受け取る。

入口の台へ運ぶ。
端を揃える。
倒れないよう、後ろの仕切りを動かす。

手順のあることは、ありがたかった。

何をすればいいか、考えなくて済む。

カウンターへ戻る途中、窓が視界に入った。

向こうのコートでは、まだ練習が続いている。

私は一度、足を止めそうになった。

さっき彼が見ていたのは、あの辺りだった。
< 154 / 385 >

この作品をシェア

pagetop