きみが窓を見なくなるまで
返さなければ。

そう思うのに、どう動かせばいいか、一瞬わからなかった。

私は両手でブレザーを受け止め、膝へ下ろした。

内側の滑らかな布が、指に触れる。

自分のものより、少し大きい。

それだけで、高木くんの持ち物なのだと実感した。

「寒くなかった?」

聞くと、彼が顔を上げる。

「俺?」

私は頷いた。

彼はシャツの袖口を一度見た。

「平気」

私はブレザーを持ち上げた。

上手く畳もうとして、肩の部分を少し迷う。

高木くんが手を伸ばした。

「そのままでいい」

私は机越しに、そっと渡した。
< 227 / 385 >

この作品をシェア

pagetop