きみが窓を見なくなるまで
「戻りたい」

少しあとで、彼が言った。

私は隣を見る。

高木くんは、前を向いていた。

「でも、戻ったら全部同じってわけでもないし」

「……同じ?」

「前と」

信号が赤になり、二人で足を止める。

高木くんが鞄の持ち手を握り直した。

「ずっと見てると、できそうな気になるんだよな」

私は黙って聞いた。

「前にやってたことだから。でも、今できるかは、やってみないとわかんない」

車が目の前を通り過ぎる。

その音が消えてから、彼は少しだけ私を見た。

「変な感じ」

笑おうとした口元が、途中で止まった気がした。
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