きみが窓を見なくなるまで
何かあった。

好きになった。

図書室に来ない日も、来るかもしれないと思って待つようになった。

名前を呼ばれると、普通に返事をするのが難しくなった。

全部、言えるはずがなかった。

私は本の表紙へ手を置いた。

「……何もないよ」

できるだけ、いつもの声で言った。

隼人くんはすぐには頷かなかった。

私の顔を見ている。

「そっか」

少しあとで、そう言った。

その声が優しくて、私は困った。

心配をかけたくないのに。

心配してくれたことが、うれしかった。
< 283 / 385 >

この作品をシェア

pagetop