きみが窓を見なくなるまで
その日の昼休み、高木くんは教室の後ろにいた。

「だから、それ昨日も聞いたって」

田中陸くんがそう言って、机に片手をつく。

周りにいた男子が笑う。
高木くんも、飲みかけの紙パックを手にしたまま笑っていた。

私は少し離れた席で、お弁当の卵焼きを箸で半分にしていた。

「妃菜、聞いてる?」

「あ、うん」

正面に座るみなみが、目を丸くする。

「今の、聞いてないときの『うん』だった」

「聞いてたよ。ボールが」

「そう、ボールが」

「……飛んでった」

「だいたい毎日飛んでる」

みなみが吹き出して、私もつられて笑った。

卵焼きの切り口が、少しだけ崩れた。
< 3 / 385 >

この作品をシェア

pagetop