きみが窓を見なくなるまで
「妃菜、最初に読んだときも、そう思った?」

私は首を横に振った。

「最初は、出さなくてもいいのにって思った」

言うと、彼が少し首を傾けた。

私は言葉を選んだ。

「今のままでいられるから」

窓の外で、ボールの音がした。

私はそちらを見なかった。

「でも、今は……出してよかったんだと思う」

隼人くんが本へ目を落とす。

指先が、机の端で止まっていた。

「変わったんだな」

私は頷いた。

「うん。少し」

彼は顔を上げた。

「聞けてよかった」

その声が静かで、私は目を伏せた。
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