きみが窓を見なくなるまで
「妃菜」

呼ばれて、顔を上げる。

隼人くんは、さっきより赤い顔をしていた。

でも、声ははっきりしていた。

「俺と、付き合ってください」

私は彼を見た。

何度も想像しないようにした言葉。

自分には向けられないと思っていた言葉。

今、目の前で言ってくれている。

私は頷いた。

それから、頷くだけでは足りないと思った。

「……はい」

隼人くんの肩から、少し力が抜ける。

彼が笑った。

窓越しではなく。

私を見て。

私はその顔を、今度は疑わずに見ていられた。
< 364 / 385 >

この作品をシェア

pagetop