窓際の高木君
「何も起きないから」

答えてから、違う気がした。

何も起きないわけではない。

雨も降るし、手紙も書くし、パンも守る。

ただ、そういう説明をしたら、ますます勧めにくくなる。

「事件とか、大きなことは。あんまり」

「佐々木は、そういうの好きなの?」

自分の名字が、思っていたより近くで聞こえた。

知っているのは当たり前なのに、少し驚く。

「……何も起きない話?」

「うん」

私は本へ目を落とした。

好きなのだろうか。

今まで、そういう分け方をしたことがなかった。

「何も起きてなくても、本人にはいろいろあるから」

言ってから、高木くんを見る。

彼は一度、本へ視線を移した。

「そっか」

短い返事だった。

でも、そのまま話を終える声ではなかった。
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