きみが窓を見なくなるまで
「どんな話?」

「喫茶店に通う人の話」

「何も起きなそう」

思わず顔を上げる。

高木くんの口元が、ほんの少し上がっていた。

からかわれている、というほどでもない。

私も少し笑った。

「でも、お店が休みの日にしか行かないの」

「なんで」

「開いてると、注文しなきゃいけないから」

高木くんが黙った。

私はその沈黙に耐えきれず、付け足す。

「……そういう人の話」

「それは、ちょっと面白そう」

「今ので?」

「うん」

彼は、表紙の文字を目で追った。

『木曜日の余白』。

私は初めて、その題名を二人で見ていることを意識した。
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