きみが窓を見なくなるまで
閉館前、高木くんは本を鞄へ入れた。

この前は返却棚へ置いた本が、今日は彼と一緒に帰る。

それだけの違いだった。

「ありがと」

カウンターの前を通るとき、彼が言った。

私は当番ノートから顔を上げる。

「……ううん」

返事が小さかった。

聞こえなかったかもしれないと思ったけれど、高木くんは一度こちらを見て、扉へ向かった。

私は、その背中を見送った。

普通のことだ。

同じクラスの人と、本の話をした。

それだけ。

本の話をするのに、こんなにいろいろ考える必要があっただろうか。

机の端にあった自分の文庫本を取る。

表紙の角が、指に少し柔らかく当たった。
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