きみが窓を見なくなるまで
「私ばっかり話してるね。妃菜は? なんかあった?」

「ううん。特には」

答えたあと、もう少し何かあったはずだと思った。

昨日読んだ本。
帰り道で見た、妙に人を怖がらない猫。
買おうか迷って、結局戻した髪留め。

でも、どれも話し始めるには小さすぎる気がした。

みなみの箸が、弁当箱の上で止まる。

「そっか」

ほんの少し間があって、それから彼女は、午後の小テストの話をした。

私は頷きながら、安心した。

同時に、その安心が少し申し訳なかった。

聞かれるのが嫌なわけじゃない。

話したくないわけでもない。

ただ、何をどこから差し出せばいいのか、いつもわからなかった。
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