きみが窓を見なくなるまで
「おはよう、妃菜」

みなみが、隣の机に手を置いた。

「おはよう」

「今日、寒くない?」

「寒い」

「だよね。私だけじゃなかった」

みなみは両手を袖の中へ引っ込め、窓を見た。

私もつられて、そちらを見る。

教室の窓は、朝の光で明るかった。

ガラスの向こうには隣の校舎がある。

昨日の図書室と同じ学校の窓なのに、ずいぶん違う。

「どうしたの?」

聞かれて、みなみへ顔を戻す。

「ううん」

それから、少し迷った。

昨日、本を貸したこと。

話そうと思えば、話せる。

でも、何でもない出来事を、何でもない声で言える自信がなかった。

私は鞄から教科書を出した。
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