きみが窓を見なくなるまで
どこかで椅子が引かれた。

入口の近くで、誰かが小さく笑っている。

私は本の背を指で押さえた。

入りたい日も。
外にいたい日も。

そういう分け方でよかったのだろうか。

一人でほっとしたあと、人と一緒にいることを楽しんだ自分まで、嘘にしなくても。

「……そっか」

高木くんが、少し首を傾けた。

「何?」

「ううん。そうかもしれないって」

うまく言えなかった。

でも、彼は待っていた。

私はもう一度本を見る。

「私、どっちかなんだと思ってた」

「俺も、最初は」

「読んでる途中で変わったの?」

「最後のほうで」

その答えに、少しうれしくなった。

同じ本の中を、違う順番で歩いた人がいる。
< 56 / 385 >

この作品をシェア

pagetop