きみが窓を見なくなるまで
カウンターへ戻り、私は自分の文庫本を出した。

高木くんは向かい側の椅子を少し引いた。

「ここ、座っていい?」

「うん」

机を挟むと、話しやすい気がした。

立って待たせている、という焦りがなくなる。

私は本の表紙へ指を置いた。

「最後、前より寂しくなかった」

高木くんがこちらを見る。

「入らなかったけど?」

「うん。次があると思ったから」

口にしてから、彼の言葉をそのまま借りていることに気づいた。

「高木くんが、そう言ってたからなんだけど」

少し声が小さくなる。

彼は本を見た。

それから、短く息を漏らした。

「そっか」

口元が、わずかに上がっていた。
< 75 / 385 >

この作品をシェア

pagetop