きみが窓を見なくなるまで
しばらくして、一年生らしい女子が本を借りに来た。

私は手続きをして、返却日を伝える。

「ありがとうございました」

小さく頭を下げた彼女へ、私も会釈する。

そのとき、窓際で椅子が動いた。

高木くんが鞄を床から持ち上げ、隣の椅子へ移している。

足の位置を変えただけだった。

それなのに、目が向いてしまった。

彼は本へ視線を落としている。

私はカウンターへ戻り、当番ノートに一冊と書き足した。

その「一」が、少し長くなった。

定規でも使ったみたいで、おかしい。

誰も見ていないのを確かめて、小さく笑った。
< 80 / 385 >

この作品をシェア

pagetop