きみが窓を見なくなるまで
帰り際、高木くんがカウンターに寄った。

「この本も借りたい」

差し出されたのは、短編集だった。

私は図書カードを受け取る。

前より手続きは早くできた。

名字と名前を確認し、返却日を伝える。

「ありがと」

「うん」

本を受け取った彼が、私の手元を見る。

「それ、明日貸すの?」

薄い青色の表紙へ目を落とす。

「うん。忘れなかったら」

「忘れそう?」

「鞄に入れるのを」

高木くんは少し考えた。

「今入れとけば」

私は、自分の文庫本を見た。

そのとおりだった。

彼がまた笑う。

私は少しだけ眉を寄せ、本を鞄へ入れた。
< 82 / 385 >

この作品をシェア

pagetop