きみが窓を見なくなるまで
翌日の朝、私はちゃんと本を持ってきた。

忘れないように、というより、入れたまま出さなかった。

みなみへ渡すと、彼女は両手で受け取った。

「ありがとう。きれいに読む」

「そんなに気にしなくていいよ」

「いや、借りた本だから」

みなみは表紙を見て、少し首を傾げる。

「妃菜、こういうの好きなんだね」

「こういうの?」

「静かそうなやつ」

確かに、表紙は静かだった。

中身も、たぶん。

「……うん」

「私、自分じゃ選ばないかも。楽しみ」

そう言って鞄へしまう。

私はその動作を見ていた。

自分の好きなものが、誰かの明日へ入っていく。

少し緊張して、少しうれしかった。
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