きみが窓を見なくなるまで
二時間目のあと、廊下で高木くんとすれ違った。

彼は陸くんと一緒だった。

私は避けるほどでもない距離を、そのまま歩く。

目が合う。

高木くんが、ほんの少し顎を引いた。

私も会釈した。

通り過ぎる直前、彼が言った。

「貸せた?」

一瞬、何の話かわからなかった。

それから鞄の中にもう本がないことを思い出す。

「……うん」

「よかった」

彼はそのまま歩いていった。

陸くんの声が、少し先で何か尋ねる。

私は廊下の端へ寄り、前から来た生徒を避けた。

覚えていたんだ。

私が本を忘れそうだと言ったことまで。

大したことではないのに、足元が少し頼りなくなった。
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