きみが窓を見なくなるまで
家に帰ってから、机の引き出しを開けた。

髪留めの入った小さな箱がある。

黒いゴム。
前に買った細いリボン。
うまく使えなくて、そのままになっているピン。

私は黒いゴムを一つ取った。

鏡の前で髪を集める。

途中で腕が疲れて、いったん下ろした。

もう一度、今度は少し低い位置で束ねる。

耳の横に、短い髪が残った。

変ではない。

でも、いつもの自分ではなかった。

明日、これで教室へ入ったら。

みなみは気づくだろう。

ほかの人は、何か言うだろうか。

そして。

高木くんは。

そこまで考えて、私はゴムを外した。

ほどけた髪が頬へ触れる。

鏡の中の自分は、何も変わっていない。

ただ、手の中の黒いゴムを、すぐには箱へ戻せなかった。
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