きみが窓を見なくなるまで
短編集を受け取り、返却処理をする。

「どうだった?」

今度は、自分から聞けた。

高木くんは少し考えた。

「三つ目が好きだった」

「引っ越しする人の話?」

「そう。読んだ?」

「前に、一回」

私は本の背を押さえた。

引っ越し先では、今までと違う自分になろうとする人の話だった。

でも結局、荷物の置き方も、休日の過ごし方も変わらない。

「変わらなかったね」

私が言うと、高木くんは首を少し傾けた。

「そう?」

「最後まで、いつもどおりだったから」

「俺、ちょっと変わったと思ったけど」

彼の指が、表紙の端に触れた。
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