きみが窓を見なくなるまで
「前の部屋では、花買わなかったじゃん」

私は話の最後を思い出した。

引っ越して数日後、主人公が小さな花瓶を買う。

花を飾って、それ以外はいつもと同じ夜を過ごす。

確かに、そこだけ違っていた。

「でも、一個だけだよ」

「一個変えたら、もう前と違うんじゃない?」

高木くんは、特に大事なことを言った顔ではなかった。

少し緩んでいた本のカバーを、指で戻している。

私は自分の手首を見た。

黒いゴム。

「……そうかも」

返事をすると、彼が顔を上げた。

「佐々木、あの話はあんまり?」

「ううん。好き」

私は少しだけ間を置いた。

「変われなかった話だと思ってた」
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