きみが窓を見なくなるまで
「変わりたかったのかな」

高木くんが言った。

私は彼を見る。

「引っ越した人?」

「うん。全部変えたいわけじゃなかったのかも」

窓の近くで、紙をめくる音がした。

私は短編集の表紙へ視線を戻した。

違う自分になる。

そう考えると、大きなことに思える。

今までの自分を、全部片づけなければいけないような。

でも、花を一つ置くだけなら。

「……変えてみたかっただけかもね」

私が言うと、高木くんは頷いた。

「そのくらいでも、よくない?」

軽い言い方だった。

私は手首からゴムを外し、指で小さく伸ばした。

「うん」

彼が、その動きへ目を落とした。
< 97 / 385 >

この作品をシェア

pagetop