きみが窓を見なくなるまで
「切れそう?」

「え?」

「それ」

ゴムを見て、慌てて力を抜いた。

「違う。なんとなく」

高木くんの口元が少し上がる。

私はゴムを手首へ戻した。

「今日、体育で使ったから」

「うん」

それ以上、聞かれなかった。

私も、髪の話を続けられなかった。

高木くんは返却した本を一度見てから、棚のほうへ向かった。

カウンターに一人になる。

私は手首を机の上へ置いた。

そのくらいでも、よくない?

髪を結ぶことは、彼が話していた小説とは関係ない。

それでも、その言葉をもう一度思い出した。
< 98 / 385 >

この作品をシェア

pagetop