名探偵は活躍しない~Season2~
 もともと船酔いする体質ではないはず。
 絶対に精神的なものだと頭ではわかっているのに、身体が拒絶反応を示す。
 目を覚ましたときは、薬が効いたのか吐き気がおさまって、だいぶ楽になっていた。
 時計は20時すぎ。
「お腹すいた…」
 身支度を終えて、のろのろと部屋を出る。
 複数あるレストランのうち、融通の利く店を選んで入ろうとすると。
「満席でして…」と言われ、がっくりとうなだれる。
 年配の人達が多いからこの時間は空いているかと勝手に思い込んでしまった。
 他のお店に行くかと思っていると。
 奥から他の店員さんがやって来て、
「相席でしたら、空いていますが。いかがですか、お嬢様」
 お嬢様…と言われ。顔がみるみると熱を帯びる。
 最初に案内してくれた店員さんは「しまった!」とばかりに急に頭をさげて謝罪してきた。
「相席で大丈夫です」
 ここで否定でもしたら、逢坂家の人間は我儘なやつばかりだとイメージが付くに違いない。

 案内された席には、10~11歳くらいの少年がちょこんと一人で座っていた。
「こちら、どうぞ」と店員さんが椅子を引いてくれる。
 お礼を言って座り込む。
 座っていた男の子と目が合う。
「ごめんなさい、邪魔して」
「いいえ」
「お一人で食事ですか?」
 家族と一緒ではないのだろうか。
「祖父と来ているんですが、祖父が今、ちょっと船酔いで部屋で休んでいまして…」
「あー、仲間。私もさっきまで船酔いしていまして…」
 と、はははと笑ってしまう。
 男の子は射貫くような真っ直ぐな目で私を見ていたかと思うと。
 急に立ち上がった。
 カバンから、ごそごそと何かを取り出すと。
「ぼく、横溝(よこみぞ)陽翔(はると)といいます」
 目の前に差し出されたのは一枚の名刺だ。
 名刺には、彼の名前と「探偵」という文字が…
「え・・・探偵?」
「10歳ですけど、ちゃんと探偵試験には合格しています」
 にっと笑った男の子を見て。
 あ、もしかして史上最年少で探偵試験に合格した子じゃ…
 と今になって気づいた。
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