ワンコなふりしてドSだなんて、どういうことですか!
 なので、三つ目の理由を言った。

「心配してくれてありがとうね。慣れない環境でちょっと疲れちゃってるのかも」

「そうですよね」と、素直なひなちゃんは頷いた。

「私もこの病院に来たとき、最初のひと月はずっとへとへとでした。帰ったら即寝みたいな」

「ええ? ひなちゃんでも?」

 彼女は人懐っこくて誰からも好かれる社交的な人だ。

「もちろんです」
 ふふと笑い合う。
「勝手も違いますからね。環境に慣れるまでは知らず知らずのうちに疲れちゃう」

 その通りなので、こくこくと私は頷く。

 初めての転職に私は少し、戸惑っている。ひなちゃんがいるとはいえ新しい人間関係をゼロから作らなきゃいけないし覚えることは多い。

「マンションに帰ると秒で寝落ちしちゃう」

「えー、でもわかるー。私もそうでした」

 笑い合ってそれぞれ仕事に戻った。

 深夜の病棟には特有の静けさが満ちている。廊下のどこかでかすかに医療機器の電子音が鳴り、すぐに止んだ。この場合は異常ではないが、念のために二人で確かめてホッと息をつく。
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