ワンコなふりしてドSだなんて、どういうことですか!
 声を落として身を乗り出す彼を前に冷や汗が出る。
 まさかとは思うが、今度の週末の予定を聞いてきたらどうしようと腰が引けたとき。

「九条先生ー、ちょっとよろしいですか。患者さんが――」

 彼は呼ばれて行き、ホッと胸をなでおろした。

 なにしろ彼はモテすぎる。
 研修医のときもモテたが、あの頃はまだ近寄るなオーラを出していたのでそれほどでもなかった。
 あれから三年、とびきりのイケメン御曹司医師が、人懐っこくて好感度の高い脳神経外科医にまでレベルアップしたのだから、女性たちが放っておくはずがない。

 昨日もナースステーションの近くで、内科に籍を置く若い女性医師が、頬をほんのり染めながら彼に熱心に話しかけていた。

 仕事の相談という感じではあったが、上目遣いで彼を見つめるその視線には、どう見ても好意以上のものが混ざっていて、九条先生はといえば、無害そうな笑みを浮かべて相槌を打っていた。
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