ワンコなふりしてドSだなんて、どういうことですか!
ふと彼は、口角を妖艶に跳ね上げて耳元で低く囁いた。
「そんなに警戒して――どうしました?」
ちょ、ちょっと? 人懐っこい笑顔で皆に慕われているくせに、完全に別人じゃない?
ワンコなふりしてドSだなんて、どういうことですか!
心の中で叫びながら、赤くなる顔を必死に隠して、私はあえて年上の先輩らしい落ち着いた声を意識して言葉を続けた。
「せ、先生。距離、近すぎですっ」
「おーっと。手厳しいなあ、雪村さんは」
私がツンと突き放しても、九条先生はちっとも堪えた様子もなく、むしろ私の頑なな態度を面白がるように目を細める。
「まあ、そこがいいんですけどね」
その余裕たっぷりな態度に思わず怒りのスイッチが入りそうになる。