ワンコなふりしてドSだなんて、どういうことですか!
「それにしても、九条先生は本当にお忙しいですね。オペだけじゃなくて、副院長のお手伝いもおありなのに、先生方の相談まで、あんなに熱心に聞いて差し上げていて」

「え?」

 なによ、とぼけたって見ていたんだから。

「あー、もしかして昨日、そこで話していたやつ?」

 彼はポンと手を叩くように小さく声を上げると、ふっと口の端を意地悪そうに跳ね上げた。

「内科の先生なんですけどね、病棟の連携について少し相談されていて。あー、あれぇ? 雪村さんもしかして」

 ふと、九条先生はカンファレンスルームのドアをそっと背中で閉めると、私との距離をじりっと詰めてきた。

「ちょ、ちょっと、九条先生……」

「ヤキモチ、妬いちゃった?」

「ち、違います! 私はただ、きゃ、客観的な事実を、申し上げたまでで……」

 赤くなる顔を隠そうと顔を背けると、彼は私の顎に手をかけて上を向かせた。

「本当に?」

 執着を孕んだ瞳で私を見つめ、低く楽しそうな声で囁いてくる。

「かわいいなぁ、やっぱり雪村さんは」
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