ワンコなふりしてドSだなんて、どういうことですか!

「お待たせしました」

 運転席の窓が開き、九条先生が顔を出した。白衣ではないラフなのにどこか品のある私服姿の彼に、ついうっかり見惚れてしまう。スタイルがいいだけに、なにを着ても似合ってちょっと憎たらしい。
 違いがあるとすれば、白衣の彼の背中に漂う緊張が私服だと感じないことくらいか。

「おはようございます」
「おはよう。さあ、乗って」

「ありがとうございます……」

 促されるまま助手席に乗り込むと、重厚なドアが閉まる音と共に、車は滑るように走り出した。

「あの……どこへ行くんですか?」
「秘密です」

 先生は前を向いたまま、楽しそうに口元を緩める。

 いったいどこで〝文字にできない用事〟を済ませるつもりなのか。そんな疑問を抱えながら、車が首都高の入り口へ差し掛かったとき、私は思わずシートから浮き上がりそうになった。

「えっ、高速ですか!?」
「はい」

 にっこりと笑うだけで、それ以上は何も教えてくれなかった。

「転職したばかりで疲れているでしょう。疲れが取れるところへ連れて行きます」

「え……? えっと。でも、大事な用があるのでは?」

「それはあとで」

 さらりとかわしてハンドルを握る九条先生はどこまでもマイペースで、けれどその横顔からは、私を気遣ってくれているような温かさも感じたりして調子が狂ってしまう。

「何が食べたいですか。和食、洋食、どっちが好きですか」

「えっと? どちらも、好きですが」

 ランチの心配かしらと思っていると。
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